対立と向き合うことイメージ

執筆者: 小菅 啓

対立と向き合うこと

人間観察日記

今年度、私は「対立の解決」がテーマのプログラム開発に携わってきました。そのため、ここのところ私の興味関心をそそる旬のテーマはコンフリクトマネジメントです。

 

先日も休日を利用してミディエーションのセミナーに参加してきました。ミディエーションとは対立や紛争の解決手法のことで、対立している人の間に中立的立場で介入する人をミディエーターといいます。セミナーではその介入の仕方について学びました。
体験型の演習がたっぷり用意され、参加者はミディエーターだけでなく、対立者の役割も順番に経験します。参加者はそれぞれが役作りを行い、楽しみながら迫真のロールプレイに臨みました。私も実際に何度かのロールプレイをやってみたのですが、その中でおもしろい発見が2つありました。

 

1.対立している者同士はそれぞれの主張があるわけですが、相手も自分も最初から対立の本質的な部分を語っているとは限りませんでした。こうしたいという表面的な主張だけでは、もっとも大事にしたいことやこだわりが語られていないこともあります。お互いに相手の要望を引き出し、聴き合わなければ、何を解決すべきかさえうまく整理が進まず、良い解決策には辿り着けないということです。

 

2.どちらかが弱い立場(顧客と営業、迷惑を受けた側とトラブルの原因を作った側など)である場合、弱い側は「自分の想いを伝える=言い訳している」ように感じてしまうため、意見を表明し難くなります。ところが、語らないことで余計に相手には真意が伝わらず、トラブルの収束が難しくなりました。このようなケースでも、相手に本音を伝えることで納得や理解が得られやすくなることがわかりました。

 

ミディエーターという存在は、双方の考えや思いを表に出させることで誤解や理解不足を解消し、前向きな解決策を話し合う「協調」の立場を生み出すことが分かりました。実際の仕事場面では介入者がいない状態で話し合うことが多いわけですが、基本は一緒だと思います。「聴き合う」「恐れずに伝え合う」という状況を創りだすことが協調的な問題解決に至る第一歩であると、今回の経験で確信しました。

 

ロールプレイとはいえ、対立解決の過程で対話を重ね、相互理解が生まれた後は、お互い自然と笑顔になっていました。現実場面でも、逃げずに避けずに向き合うことで、長期に渡る得難い信頼関係というご褒美が手に入るのではないでしょうか。

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