お客様がOJTリーダー
とある駅のホームで、
車椅子のお婆さんが、車掌さんと一緒にエスカレーターを降りています。
下までつくと、お婆さんは車掌さんに右手を差し出し、
車掌さんは満面の笑みで握手に応じました。
車椅子で颯爽と去っていくお婆さん、
そして、止めたエスカレーターを再稼動させるため、軽やかに走り出す車掌さん。
このエピソードを研修の中で、
「車掌さんはお婆さんの感謝によって、とても動機づけられただろう」
という事例として紹介していたところ、ある受講者の方から
「そのお婆さん、かっこいい!」という感想が返ってきました。
私は、「おやっ?」と思いました。
このときの講義は、「事業・組織戦略を考える」というものでしたが、
私はこの受講者の発言から新たな気づきを得ることができました。
戦略やマネジメントをテーマにする研修を中心に活動している私にとって、
この事例は、車掌さん(従業員)は「誰に動機づけてもらっているのか?」
ということを知っていただくことを目的にしていました。
そこへお婆さんのほうに注目した発言があったことは、私にとって新鮮なことでした。
私にとってお客様である受講者の発言が、私自身の成長機会をつくってくれたのです。
こんなふうに、「お客様が自分を育ててくれる」という感覚を持ったことがある方は
多いのではないでしょうか。
そう考えてみると私は、これまでの経験の中で、最も成長したと感じるのは、
「しっかり教えることができた研修」よりも
「受講者の発想・言動に踊らされた(汗)研修」です。
今回の「お婆さん、かっこいい!」も、受講者から新しい視点を与えてもらう
という経験になりました。
戦略やマネジメントの推進が、お客様にどう写るのか?
推進する側になるとつい、従業員の行動にのみ目が行ってしまいますが、
「お客様視点」を改めて考えるきっかけになりました。
ところで、皆さんは、このお話で「どちら」に着目されますか?